【夢猫の魔法】4
第4章 魔法使い
1
「あそこだよ!」
太ったおじさんは城を指差した。
「さあ、行っておいで!」
太ったおじさんは知香の背中を押した。
「おじさん!ありがとうございます!」
「いいよ。いいよ。お礼なんて。」
太ったおじさんは照れ臭そうに言った。
「おじさん…。最後に名前を…。」
「僕の名前は『ロッド・サマビル』!また会おうね!知香ちゃん!」
「はい!」
ロッドは去って行った。
知香が城の門をくぐろうとしたとき、
「なんだ!お前は!」
「何をしにきた?」
城の門番、2人が槍の先を知香に向けて来た。
知香は手をあげ、
「ひょぉ!?私、悪いやつではありませんよ!?」
驚きながら言った。
「ここの王『グラント・ジェーンズ様』に何をしにきたんだ!?」
門番は槍の先を知香に近づけた。
そのとき、トリスタが門番に言った。
「このものは、旅人になりたいそうだ。だから、ここの王から修行を受けたいらしい。どうか、このものを通してやってくれ。」
「では、ここを通りなさい。」
門番は槍を立てた。
知香はトリスタと共に、門をくぐった。
「ありがとうね。トリスタ。」
「フンッ!大したことじゃないニャ。こんなちっぽけなことを言えないのがおかしいのニャ。」
「てか、さっき、あんた『ニャ』って言わなかったよね。」
「まあ、意識すれば『ニャ』くらい言えないことも、ニャい(ない)ニャ。」
「てか、ここの世界は猫がしゃべるのは常識なの?」
「まあな。犬や熊もしゃべるぞ。」
「ふーん。」
そう言って、知香たちは城の中に入った。
「広いな〜。城って。あ、地図あるよ!」
知香は入ったすぐそこにある、地図に指を指した。
「なっ…。なにこれ…。文字が分からない…。」
「当然ニャ。まあ、地図の文字を読まなくても、王座を辿り着けるニャ。」
知香はトリスタについて行き、王座の間の扉の前に着いた。
「開けていいかな?」
知香はトリスタに不安そうに言ったが、トリスタは無視をした。
「お邪魔します!」
そう言って知香は扉を開けた。
「何者だお前は!」
王は知香に杖を向けた。
「私に魔法を教えてください!」
知香はグランド王の言っていることを無視し、大きい声で言った。
「ふーん。旅人になりたい者か。良いだろう。」
「ありがとうございます!」
知香は頭を下げた。
「おい。猫。お前は何者だ。」
王はトリスタに敵意を向けた。
「失礼。我はその者の仲間。これから共に旅をする者である。」
トリスタは大きい声で、言った。
「ちょっと!いつあんたが私の仲間になったのよ!」
知香は小さい声で言ったがトリスタは無視をした。
「猫。お前はこの間から出て行きなさい。」
「承知しました。」
トリスタは王座の間から出て行った。
「さて、そなたの名前を聞かせてもらおうか。」
「私の名前は…。『森中知香』です!」
「『森中知香』…。そなた…。夢の国の者だな?」
「はい…。な…
「まあ、良い。魔法を教えるとしよう。」
2
知香はなぜ自分が夢の国の者か知っているのかを聞こうとしたが、グランド王は魔法を教えるのとを言った。
「はい!」
「まずは攻撃魔法からだ。」
「攻撃魔法…?」
知香は首をかしげた。
「そうだ。攻撃魔法だ。敵に向かって攻撃をする魔法だ。」
「ほう…。じゃあ、さっそく教えてください!その攻撃なんとかというやつを!」
「う…。うむ…。いいだろう。」
「ありがとうございます!」
「しかし、その前に魔法スキルがいる。」
知香が頭を下げた瞬間、グランド王は言った。
「魔法スキル…?」
「うむ。魔法スキルが無いと魔法が使えないのだ。魔法使いの経験を積み重ねるごとに魔法スキルは増えていく。一定の魔法スキルを獲得すると、新しい魔法や魔力があがるのだ。」
「魔力とは…?」
「魔力とは魔法の威力。魔力が高くなれば攻撃魔法はダメージが多くなり、回復魔法は回復量が増え、能力低下補助魔法は能力低下をしやすくなり、能力向上魔法は能力が高くなりやすくなるのだ。」
「へー…。じゃあ、剣士はなんのスキルを持たなきゃいけないんですか?」
「剣士はゆ勇気スキルが持たなきゃいけないんだ。称号によって持つスキルもちがうのだ。」
「勇気スキルはどういうものなのですか?」
「勇気スキルは斬る技が獲得できる。
ファイアカット。ブレイブソード。など様々だ。ちからも強くなるのだ。」
「ほー…。」
「おっと、話がずれてしまった。さて、魔法スキルを…。」
グランド王は足下に魔法陣らしきものを書き始めた。
「なんですか?それは。」
「魔法陣だ。さあ、これに乗りなさい。」
グランド王は魔法陣を書き終わると知香を魔法陣の上に乗るよう指示した。
「は…。はい…。」
知香は魔法陣の真ん中に乗った。
すると、魔法陣が光り始めた。
「知香…。お主は『炎』『水』『光』『地』『闇』のうち、どれが好きか応えなさい。」
「え…。えーと、」
「早く決めておくれ。魔法陣が消えてしまう。」
「え…。あっ…。ぬ…。じゃあ『水』!『水』!」
「ほう…。『水』か…。」
グランド王は手を合わせ、なにかを呪文をつぶやき始めた。
「水の精、『ウェンディーネ』たちよ…。新たな魔法使いとなる、このものに水の魔力を与えよ!」
知香の周りに複数の精霊が集まり、精霊たちは、詩を歌い始めた。
知香は精霊をじーっと見ていた。
精霊たちは歌を歌い終わると、さーっと消えて行った。
「いっ…。今のは…?」
「儀式だ。『水愛の詩』という儀式の形だ。」
「今の精霊は『ウェディーネ』とは…?」
「『ウィンディーネ』だ。『ウィンディーネ』とは水の精霊。歌や愛を大切にしているのだ。」
「へえ…。」
知香は阿呆面で聞いていた。
「さあ、攻撃魔法を教えるとしよう。」
「え…。あ、はい…。」
まずは水属性の魔法からだ。
「左手を前に出し手を広げろ。」
知香はグランド王の言うとおりにした。
「水をイメージしてみろ。」
知香は水をイメージした。
「攻撃するように念をこめろ。」
知香は念を込めた。
知香の手の前から魔法陣が現れた。
ピシャ!
魔法陣から小さな水が出た。
「結構、力いりますね…。」
「まあな。さっき、魔法スキルを手にいれたし、マジックポイントも少ないからな。」
「マジックポイント?」
「マジックポイントとは魔法を使うために必要なポイントだ。大きい魔法ほど、マジックポイントが多く必要になる。」
「ゲームでもありますよね…!」
知香は目を輝かせながら聞いた。
「ゲーム?なんだそれは。」
ーしまった!ここにはゲームがないんだった!ー
知香は心の中で叫んだ。
「いや…。なんでもないです…。」
「そうか。」
グランド王は少し気になっているっぽかった。
「あの…。こんな水で敵にダメージを与えることができますかね?水って、よっぽどな量がないほど、痛くないような気が…。」
「…。考えてみろ。水はどんな姿に変われる?」
「水…?水は水ですけど…。」
「ま、まあ、そうだな…。しかし、水が変化することはお主も知ってるだろ。」
「水が変化する…?水が火になったり、木になったりすることですか?」
「いや…。え…。まあ変化することは当っているが…。」
グランド王は考えた。
「水の温度変えるとどうなるか。これで分かるだろ。」
「お風呂の水とか、冷水とか…。あっ…!」
「…。分かったか?」
グランド王は期待なさげに言った。
「生活に役に立つってことですよね!」
知香はとても馬鹿であった。
「…。氷や熱湯。これでダメージを与えるのだ。」
「あぁー!私惜しいですね!」
ー惜しくない…ー
グランド王は呆れていた。
「でも、どうやってそんな使いわけるのですか?」
「簡単だ。イメージを変えるだけでよい。」
「氷の魔法なら、氷を想像するのですか?」
「いや。氷はあくまでも水属性魔法だ。氷魔法はアイスフリージングとよぶ。水に感情出させるのだ。」
「水に感情…?」
「水が怒っていたり、泣いていたり、笑っているところを想像する。『無』ならもちろん普通だ。」
「水をキャラクター化させるってことですね!」
「まっ…。まあ。そういうことだ…。」
王は知香の言葉に困っていた。
「さあ、アイスフリージングをしてみろ。」
「はい…。」
知香は念を込め、怒った水をイメージした。
キシャ!
魔法陣ができ、小さな雪が勢いよく王に当たった。
「痛い!痛い!」
「あっ!ごめんなさい!」
「しかし、初めてにしたはよいな。」
「これが、アイスフリージングですか!」
「いや、これは『スノーホワイト』だ。」
「『スノーホワイト』…。別物じゃないですか!?」
「しかし、『スノーホワイト』は久しぶりに見たぞ。少し弱かったが、『スノーホワイト』はあの賢者『サチコ』が使っていた魔法だ。そうそう、素人が使える魔法ではない。」
ー「サチコ」…。聞いたこと、ある名前だ…ー
知香は不思議に思った。
3
「これで、私の教えることは終わりだ。」
「えっ…!?」
「私は魔法の基礎しか教えるのとができないのだ。」
「そんな…!もっと教えて欲しかったです…。」
「大丈夫だ。お主はきっといい魔法使いになる…。」
王は知香に薬草を渡した。
「なんですか、この草…。」
「苦いけど、傷が癒される不思議な植物さ。薬草にはもっと種類があるよ。」
「ありがとうございます!」
そのとき…!
パリーン!
窓が割れた。
その窓から化け物の群れが入ってきた。
「ゴブリンだ!!なぜ、ここに…!まさか…!結界が…!?」
そのとき、グランド王はその群れのボスと思われるゴブリンに強力な闇の魔法をくらった。
「うわぁ!!」
グランド王は倒れた。
「グランド王様!?」
「知香…。頼む…。ゴブ…リンたちを倒しまて…く…れ…。」
グランド王は気を失った。
「まさか…。死…!?」
「それはニャい(ない)ニャ。」
後ろから、聞き慣れた声が聴こえた。
「トリスタ!?」
知香は後ろを向いた。
「気絶してるだけニャ。」
トリスタが王座の間に入ってきたのだ。
「知香。ゴブリンたちを早くたおすニャ。」
ゴブリンたちは部屋を荒らしていた。
「私…。頑張る…!」
「俺も手伝ってやろう。」
知香はさっそくスノーホワイトを使った。
「ギョェェ!」
ゴブリンたちは次々と倒れていった。
そして、ゴブリンたちは砂ように消えていった。
「え…?消えた?」
「モンスターや悪魔は倒されることで消える。それは逃げることなのニャ。そうやって、自分たちの拠点に帰るんだニャ。」
「へー。」
そのとき、後ろから知香はゴブリンに殴られた。
「うっ…!」
ゴブリンたちは次々と知香に集まってきた。
ゴブリンたちは知香を殴った。
「痛い!痛い!痛い!いてぇよ!くそ!バカ!バーカ!」
「あいつ馬鹿だニャ。」
トリスタは光の魔法陣をつくり、魔法陣からは光が放たれた。
「ひぎゃ!」
ゴブリンたちは倒れていった。
「もう、ゴブリンはいないね!よし、倒した!倒した!」
「知香…!後ろ…!!」
知香は気づかなかった。後ろにボスのゴブリンがいることを…。
「うっ…!」
知香はゴブリンに殴られ、倒れた。
「痛い…。痛いよ…。さっきから…!」
知香は起き上がった。
「いてぇわ!このハナクソ!」
知香の声が王座の間に響いた。
「バーカ!バーカ!クソクソ!ベロベロバー!!」
ゴブリンは耳を塞いだ。
「耳塞ぐなよ!この猿!馬鹿ザル!チンパンジー!ゴリラ!ホモサピエンス!ホーモー!!」
「ゴブリンが可哀想だニャ…。」
「ビギォォォォォォォオオオ!!」
ゴブリンは叫んだ。
「…。ごめんなさい!」
知香はおじぎをし、王座の間から出ようとした。
しかし、
「あれ?ドアが開かないよ!あれ?あれれ?あぶー?」
知香はふざけながら、指をくわえた。
「そんなことしてる間はニャいニャ!早く、ゴブリンを倒すニャ!」
「そうだね…!私…!逃げちゃダメって分かってる!だから、私は…!たたか
「そんなぶっても可愛くニャいニャ!演技か分からニャいけど、いいから倒すニャ!」
知香の意味不明なカッコつけた演技なんかみている暇はないとトリスタは思った。
「ちぇっ!」
知香は熱湯の魔法を使おうとした。
「おりゃー!!」
ショーー
魔法陣からは水がとても勢いよく出た。
…。
ゴブリンとトリスタは知香を呆れた顔で見ていた。
「ゴブリンには熱湯が効かない…!?」
「知香、魔法陣から出てるお水さんから湯気が出てるかよく見るニャ。」
「…。」
知香は魔法陣から出ている水を見た。
「うん!お湯!」
「ちがうニャー!!」
「やだなぁぁぁぁあ!ボケだよ!ボケ!分かる?ボケってのは〜
ドスっ!
知香はゴブリンに殴られた。
そして、知香は再び起き上がった。
「あれ〜?こいつおかしいな〜?グランド王には魔法使うのに私には魔法使わないんだ〜?そ・ん・で、あんた、ここの城を荒らすために来たんじゃないでしょ。だって〜、普通ならここから、配下のゴブリンたちをここの部屋から出すよね〜?」
知香は人差し指で、ゴブリンをつつきまくった。
「あの鍵を閉めたのも…。あんたなんじゃないの〜?」
知香はゴブリン目をしっかりと見た。
ゴブリンは割れた窓から逃げた。
そして、知香はグランド王に薬草を呑ませた。
「ゔっ…。私は何を…?」
「気を失ってたんですよ!」
「あ、そうか!ゴブリンに魔法を掛けられて…。君があのゴブリンたちを?」
「え?まあ、はい…。」
「素晴らしい魔法使いだ!君は!」
「え?いや、そんなことないですよー?そんなことありますかー?ありますよねー?」
知香はすごく照れた。
「あの…。一つ質問してもいいでしょうか?」
すると、急に冷静になった。
「なっ…。なんだい…?」
「モンスターや悪魔にも言葉は分かるのでしょうか?」
「うーむ。知的なモンスターや悪魔だったら分かるんじゃないかな?」
「そうですか!ありがとうこざいます!」
「それが、どうしたんだい?」
「いや!なんでもないです!」
「…!さあ、君は今日から魔法使いだ!これから、色んなことがある…!君はそれを乗り越えるんだ…!」
「なんかかっこいいですけど、私には意味が分かりません!」
「まあ、よい…。旅をするうちにきっと分かる…!さあ、今から旅を始めたまえ!」
知香は後ろを振り返った。
そして、部屋は暗い世界に変わり、王は遠くなって行った。
「はい!私、絶対素晴らしい魔法使いになります!」
「さらば!未来の夢の国の賢者よ!」
王の声は小さくなっていった。
気がつくと、城の門の前にいた。
「あれ…?」
「良かったニャ。魔法使いにニャれて!」
横にはトリスタがいた。
「この瞬間移動的なものも魔法なのかもね!」
「そうかもしれニャいニャ。」
「行こ!」
知香は歩き始めた。
「どこへだニャ?」
「旅だよ!一緒に行こうよ!」
「まあ、ついてやってもいいニャ…。」
「その前におじさんの家行こっか?」
2人は城の城下町へ行き、ロッドの家へ向かった。
2人の旅は続く…。
続く